事件からそこそこ時間が経つが、これだけの記憶が残っているわけではなく、記録をとっていた。
弁護士を依頼したとき、会社への連絡と合わせ、ノートの差し入れを頼んだ。しかし、前払いしないといけない弁護士費用を牢屋の中にいる俺は払うことが出来ない。
俺の担当の弁護士さんは、しばらく手弁当で俺の担当をしてくれたのだが、さすがに費用の支払い前ということでノートではなくA4のコピー用紙を数枚差し入れしてくれたのだ。
留置所では朝食後の運動の時間のあと、本を借りたり出来る時間があるのだが、その時にボールペンを借りることもできる。
弁護士の差し入れてくれた紙にそのボールペンで記録をつけていたのだ。
俺は元々書くことが好きだったので、何もやることがない牢屋の中で、何かを書いていると落ち着くのだった。
警察で借りれるボールペンは独特で、まずキャップがない。そして、芯の先がほんの少ししか出ていない。
また、ボールペンの先や上の部分はくるくる回すと外れるが、留置所のは外れない。
要は凶器にならないような(それは他人はもちろん自分をも傷つけることがないような配慮なのだと思う)作りになっているのだ。
記録を書きためているうちに、安部譲二の塀の中の懲りない面々という本のことを思い出していた。
釈放されたら本でも書こうか、YouTubeでもやろうか、そんなことを徐々に考えるようになった。
実際には勾留生活を描いた本やブログ、YouTubeは腐るほどあり、あんまり意味がないなと釈放されてから知ることになるのだが…
次回をお楽しみに笑