無事マンションの売却も決まり、予定日に予定通り売却された。
俺のローンは少しの自己資金を足して完済された。
短い期間の高層?マンション暮らしだったが、いくらいいもの、いいうちを手に入れたところで貧しい心は満たされないことがよくわかった。
高い授業料だったが、本当にいい勉強が出来たと思っている。
想定外があった。
俺のローンは(住宅ローンを組む場合多くの人はそうするだろうが)保険がついており、一括返済をしたため残り期間の保険分が返金された。これが20万ほどあり、いろいろ助かった。
さあ、明け渡しは2ヶ月後と約束していたので、早く新しい家を探さないといけない。
地元の不動産屋に出掛けた。
俺の職場は賃貸の場合住宅手当がつき、3割の補助がある。これはでかい。
いつになるかわからないが、兄が死んだら母親を引き取ることは決めていた。
だから2部屋はほしい。
俺の住んでいるところの2Kや2LDKの相場は65000円前後だった。これに駐車場や共益費がかかる。
3割補助があるとはいえ、60000台は躊躇した。
出来れば全部込みで55000以内におさめたい。
職場のなるべく近くで、年老いた母のことを思うと1階で、なるべく段差がなくて、バストイレ別で、ウォシュレットがついていて……と希望条件はいろいろあったが、予算内ではかなり年代物の物件しかなく、古びた風呂やトイレの写真を見ると、どうしても前のマンションと比べてしまい、かなり気分は萎えた。
「職場と違う市区町村まで広げてみませんか」
そう言われ店員のPC動作を見ていると、一つのアパートがヒットした。
2K、1階、バストイレ別、ウォシュレット付、シャワー付き洗面台
これだけで全部込みで53000位だった。
しかも、隣の市区町村とは言え、職場までは車で5分だった。
おおおお、まさしくこれ!
不満点は少し年代物だったのと、部屋が襖で仕切られただけなので、当然音は漏れプライバシーが少ないこと。
しかし、写真を見ていると内装はかなり新しく見え、実際に大家さんが隣に自宅があって、アパートの手入れもこまめにされているところだった。
転居はしているがまだ、清掃などが間に合っておらず、下見もできないとのこと。しかし、明け渡し期限までには余裕で間に合う。
俺は仮押さえして、自分で物件を見に行った。外から少しでも確認したかった。
夜に近かったが、転居済みということもあり、カーテンが撤去されていたため、中が丸見えだったのが好都合だった。
床はフローリングではないが木のフロア、
窓のサッシは古そう、
しかし日当たりはよく中は思っていたよりかなり綺麗だ。
決めた、ここにしよう。
母親を引き取るまではかなり贅沢な部屋の使い方にはなるが、いつでも引き取れるようにしておかないと。
次の日、俺はお金を下ろして契約に行った。
よし、これで住居も決まった。
俺の新しい人生の土台が一つずつ固まっていった。