俺はレンタカーを借り、隣に姉を乗せて会社の寮へ向かった。
その頃は特に仲が悪かったわけではないので、悪いことをしたと謝罪したり、何か話をしたように覚えている。話の中身こそ忘れてしまったが。
1時間弱車を走らせ、寮についた。
敷地内には入るなと言われていたので、離れたところに路駐した。
姉にこれこれを持ってきてほしい。これはこの辺に置いてあるから……と説明しながら紙に書き、俺の車の鍵と返さねばならない部屋の鍵、そして5万を預けた。部屋のクリーニングなどでお金がかかると思っていたので、いくらか事前に支払っておこうと思ったのである。
夜8時くらいだったと思う。
既に辺りは真っ暗であり、顔など見えるはずもなく、乗っている車もレンタカーであったため、仮に同僚が近くを通っても俺が来ているとは気づくはずもないのだが、車のヘッドライトがこちらを照らす度に俺は顔を伏せた。
1時間ほどして姉が俺の車に乗って戻ってきた。
車を交換し、俺が自分の車を、姉がレンタカーを運転し、車を返してホテルへ戻る。
道すがら、腹が減ってないか聞くと大丈夫だと言う。
そして、ホテルに戻った。
俺は疲れきっていてそのまま寝ようと思っていたが、電話が鳴った。
兄からだ。
話がしたいと言う。
めんどくさ。
でも、助けて貰った手前、断るわけにもいかず、俺は兄の部屋に向かった。