真帆の手編みのマフラーを巻いたまま二人で車に乗り、レストランに向かった。
本当に繁華街の中にある店で、俺はフレンチや中華のコースは食べたことがあったが、イタリアンは初めてだった。
恥ずかしい話だが、今でこそ当たり前のパスタという言葉もスパゲッティしか馴染みのなかった俺には敷居が高かった。
イタリアンでは当たり前のブラッドオレンジジュースの存在や、デザートではなくドルチェということも初めて知った。
メニューは日本語で書いてあったから普通にオーダー出来たが、よく分からない食材の名前もあった。特にパスタの名前はよく分からなかったが、真帆は自分の好きなものを頼み、俺は無難なトマトソースのパスタにした。
初めて食べるイタリアンのコースはおいしかった。(以降今までフレンチに行くことはなく、勝負メシは専らイタリアン、たまに中華だった。歳を取って懐石料理も選択肢に入ったが苦笑)
レストランでどんな話をしたかは覚えていないが、料理の話に夢中だったような気がする。
そして、ラブホに向かった。
その地方では割と有名なホテルチェーンだった。
フロントで部屋を選ぶのだが、ほとんど満室だった。
俺はまあいいかと、一番高い部屋のパネルを押した。確か休憩で16000円だったと思う。
部屋に入ってびっくりした。
キッチンがあり、風呂もベッドも二つあり、サウナがあり、もう豪華絢爛だった。
そこで俺は真帆とセックスした。
お店のサービスではない、本当に愛し合ったと思えたセックスだった。
欲で結ばれるのではない、愛で結ばれた忘れられないセックスだった。
思いの外時間がかかり、慌ててホテルを出て店に帰ったのはギリギリの時間だった。
店で上がりのアイスクリームをいただいた。
遅くなったため、今日は泊まることにしたが今から泊まるホテルを探すのも大変だった。すると真帆伝いで店の人が近くのビジネスホテルを取ってくれた。
俺はビジネスホテルで今日、正確に言うと昨日のデートを反芻していた。本当に楽しい1日だった。
そして、ビジネスホテルの殺風景な天井を眺めながら、一人きりになった寂しさを味わうのだった。
(つづく)