その日は水曜だった。
俺は実家から自分のマンションに戻っていた。
まだベッドで寝ることが出来なかった。
よく意味がわからないと思うが、釈放され初めて戻ったマンションの10階の我が部屋に一人でいると、飛び降りかねない精神状態だった。
だから実家に戻ることにしたのは以前書いた通りである。
職業訓練は実家から通うにはちょっと遠かったためマンションに戻ることにしたのだが、一人でいると妙に孤独が募った。
寂しいというのを通り越し不安で不安で仕方ない。まるでこの世に一人だけ取り残されたような気分になるのだった。
部屋の真ん中にソファーが置いてあったのだが、そこからベッドに移動すると死んでしまうかのような不安に襲われる。
だから、ソファーでうとうとしてきたら、そのまま電気もつけ、テレビもつけたまま寝てしまうようにしていた。知らぬ間に眠りに落ちている、という風にしないと眠れなかったのだ。
職業訓練は4ヶ月の期間があり、最初の2ヶ月は座学だった。
持ち物を確認し、初日だったのでスーツまでは決めなかったがYシャツにスラックスという格好で教室に出掛けた。
俺のマンションからは歩いて15分足らずのところに教室はあった。
9時から4時まで。
果たして俺は持つだろうか。
一応ポケットにパニック障害の薬を忍ばせて、俺は教室のドアを開けた。