再び俺は部屋の万年床に倒れ込んだ。
このまま死ぬという感覚はなく、ただただ気持ち悪く辛い。
キーンという耳鳴りもおさまらない。
俺はその時どうしてもポカリスエットが飲みたくなった。
俺は情けないことに、うたちゃんに電話していた。
うたちゃんは以前書いたように、俺が教員初任校の後輩だ。お互い異動し、たまたま同じ町の学校に赴任しており、たまに食事をして旧交を深めていた。
電話でうたちゃんに、自殺未遂をしたのだが辛くてどうしてもポカリスエットが飲みたいことをそのまま正直に伝えた。
うたちゃんは本当に飛んできてくれた。
「何やってるんですか、たかさん先生!」
「ごめん、情けないんやけど」
この日うたちゃんは確か親戚の家に行くか何かの大切な用事があった。それを後回しにして俺のもとへ駆けつけてくれた。
うたちゃんは俺を気遣うと、おもむろに携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
知り合いの医者に、バファリンを過剰に飲んだ人がいるが、どうすればいいか、何か注意することはないかということを聞いていた。
俺は涙が出るほど感動する余裕はなく、へたれこんでいたが、本当に悪いなぁと思いつつポカリスエットを一口ずつ飲んでいた。
このころには吐き気もだいぶおさまっていた。
うたちゃんは、耳鳴りは暫くすればおさまるがもしかすると肝臓がやられているかもしれないから病院で診てもらった方がいいということを医者から聞き、俺に伝えてくれた。
この後の記憶はさっぱりない。
でも、うたちゃんと話をし、ポカリスエットを飲んだことで俺はだいぶ正気を取り戻し、次の日には何もなかったように学校に出勤したことは覚えている。
かくして1回目の自殺未遂は意を叶えることなく終わった。
でも、俺を取り巻く状況は何一つ変わらなかった。
死にたいと思う気持ちは萎えることはなく、むしろ死への憧れは甘く俺を誘うのだった。
うたちゃんにこんなに迷惑をかけていたのに、俺は何にも変わっていなかった。
(つづく)