鳴海ちゃん(仮名)との出会いはよく覚えていない。
俺と鳴海ちゃんは学部は一緒だが学科が違った。語学の講義のクラス編成上、俺と鳴海ちゃんの学科がまとめられて仮のクラスが作られており、それが出会いのきっかけと言えばきっかけだ。
今となれば鳴海ちゃんのどこが好きだったのか、どういう経緯で好きになったのか全く覚えていない。
でも、今でも仮に出会うことがあればきっとドキドキすると思う。
いつもグループで遊んだり食事に行ったりしていて二人で遊んだことはない。
深夜に長電話したり仲の良い友達の一人ではあったが、俺の一方的な片思いだった。
周りの友達もうまく行くように俺の知っているところ、知らないところで尽力してくれたのだが、縁がなかった。
告白したことは覚えている。
ラブレターを書いた。古いな……
当時はLINEはもちろん、携帯電話やインターネットすらなかった。ようやく留守番電話機能が電話に付き出した時代だ。
何度も書き直し、良い香りのする石鹸を手紙と便箋の上に何日か置いた。
どうやって渡したのかは覚えていない。
返事は何気なく覚えている。
付き合うという踏ん切りがつかない、仲の良い友達でいてほしい。そんな内容だったと思う。要はフラれたのだ。
「仲の良い友達」の関係は続いてはいた。
でも、俺は恋愛依存症体質というか、誰かに愛されたい、いや誰かではダメで女の子に味方でいてもらわないと自分を保てないくらい弱い人間だった。「愛する」ことの意味など全く分かっていないくせに、俺は俺自身のために(そのときは情けないのとに相手のためだと信じ込んでいたのだか)愛を求め続けた。
俺は徐々に暴走し始めてしまった。
当時にはなかった言葉だが、俺はストーカーになっていった。
(つづく)