以前、真帆は店のマネージャーが好きで、自殺未遂をしたと書いた。
俺はそれになぜか甘い憧れのような感情をずっと抱いていた。
真帆はバファリンをODしたと話していた。
確か5月のGWの時期くらいだったと思う。
休みの日、俺は車を街へと走らせていた。
何せ勤務地は僻地で、一番近いコンビニまで車で20分かかるところだった。
事前にネットで俺の体重でのバファリンの致死量を調べていた。
120錠だった。
今ではODごときでは簡単に死ねないことは知っているが、当時はこれで死ねると思った。
一つの店でバファリンを多量に買うのは不自然だ。俺は街のドラッグストアをはしごして、必要量のバファリンを手に入れた。
衝動的だった。
遺書も書いていなかったし、家の片付けも全くしていなかった。
ただただ今の苦痛から逃げたくて仕方なかったのだ。
俺は大量のバファリンと2リットルのペットボトルの水を車に乗せ、当てもなく死に場所を探すため車を走らせた。
いつの間にかとっぷりと日は暮れ、真っ暗になった。
俺は来たことのない山道を車で走り、路肩のあるところに車を止めた。
ここで死のう。
俺は箱からバファリンを取りだし、次々にシートから出して10錠ずつくらい水と一緒に飲んだ。
シートから薬を出してはまた飲みを繰り返し、俺は10分ほどで「致死量」のバファリンを飲み終えた。
その時の感情は全く覚えていない。
実はこの数ヵ月後また自殺未遂をするのだが、このときの意識を失うまでの感情は割とはっきり覚えている。
ただ、1度目は何を考え、どう感じていたのかは覚えていない。
本当に衝動的だった。
バファリンを飲み終えた俺は車のシートを倒し、暗闇の外に見える星空を眺めた。
(つづく)