実家に帰り、数日ゆっくり過ごした。
自殺未遂をしたのだが、そんな悲壮感はなかった。
と言うより、薬がまだ残っていて状況がよく飲み込めていなかった。
この辺りの時系列もはっきりしていないのだが、俺が病院のベッドで眠っている間、兄は二つの面談をしていたという。
一つは校長。
一つは警察と真帆。
この真偽は全くわからない。
確かめようがなかった。
校長との面談では、俺を退職させるという話になったそうだ。
校長は昔から生徒指導の大家で、警察の知り合いはふつうにいたそうだ。
その人に自ら連絡を取り、俺と真帆との一件がどういう状態なのかを調べてもらったそうだ。立件に至るまでではないものの、警告を発するレベルだということで、いつこのことが明るみになってもおかしくないという状況だという。
そりゃそうだ。
真帆や店側の出方次第では現役公立中学教師がソープ嬢にストーカー、なんてマスコミの格好のネタになる。
今のうちに退職した方が本人(=俺)のためになる、という主張だった。
兄は校長に土下座し、何とか教員を続けさせてやってもらえないかと頼んだそうだ。
ただ、校長は首を縦にふることはなかったという。
もう一つは警察だ。
俺の自殺未遂現場での発見に至るまでと併せ、ストーカーのことも聞いたと言う。
そしてその場に真帆もいたと。
相手は訴えるつもりだったそうだが、ここでも土下座して訴えるのだけは止めて欲しいと伝えたそうだ。
この話を聞かされた時の俺はボーッとしていて、何が現実で何が夢なのか全くわからない状況だった。
退職、つまり自己退職という名のクビになろうとしていたのだが、それも現実感がなく兄の話をただただふーん、と聞くような感じだった。
兄と一緒に俺が教員していたところへ戻り、教頭を交えた4人で話をした。
その場で校長の考えを聞かされた。
あまりよく内容は覚えていないのだが、責められることはなく、あなたは疲れているからゆっくり休んだ方がよい、クラスがうまくいかないと相談に来てくれたとき力になれなくて申し訳ないとのことだった。
それでもボーッとしている俺に兄は「校長さんは学校を守らなあかん。だから辞めるしかない」と俺に話していた。
俺は実感のわかないまま、校長室で退職願いを書き、その場で退職の手続きを始めていた。というか、始めされられていた。
(つづく)
※更新、また遅れるかも知れません。
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