ネットにとある女性のホームページがあり、そこに明らかに真帆のことだとわかる記事があった。
その女性は看護学校の出身で、看護師になったのだが、自分の同級生がAVに出ていることを知ってショックだった、という内容だった。
そのサイトに書かれていたAV嬢の名前が真帆の芸名?と同じだった。
学校の時は暗く変わった子だったと書かれていた。
当時のホームページは管理者のメールアドレスか載っていることが普通だったので、俺はメールを送ってみた。
あなたの書いている同級生は今ソープにいます。
私はその人に騙され、お金をたくさん巻き上げられました。
何とか取り返したいのですが、連絡先がわかりません。
その子の本名や住所など、わかる範囲で教えてもらえないでしょうか。……と。
返事はなかった。
もらった方もビックリしただろう。
その子がまともに返事をくれていたら、俺は何をしでかしたかわからない。
管理者が返信をしなかったのは、真帆もその子に嫌われていたというわけではなかったのかもしれない。
まあ、面倒なことに関わりたくない、と思ったのが一番の理由だろうが。
ただ、このホームページの記事を読むと、真帆は少しは本当のことを俺に話してくれていたみたいだ。
看護学校に通っていた。
暗い学校生活だった。
それは、聞いていた通りだ。
こういう少しの真実が、また俺の心を苦しめる。
もしかすると真帆は、俺のことが本当に好きなのかも、なんて。
あと、2ちゃんねるには明らかに俺を意識した書き込みが幾つかあった。
俺は幾つかのサイトで暴れていたのだが、その相手が真帆であることに気づいていた、わかっていた人がいたようで、
・たかさん水族館に行った?
・たかさんはアトピー体質?
・たかさんはデーブ大久保に似ている
・書き込み者のハンドルネームが真帆のメールアドレスの一部
等々、俺を刺激したいのか何なのかわからない書き込みがあった。
また、自分も真帆に騙された、という男の書き込みもあった。
真偽は全くわからない。
経緯を知っている店の関係者かもしれないし、別の太客に真帆が俺のことを喋っていたのかもしれない。
ただ、俺はネットではそれなりに有名人になっていた。
真帆から聞いていた店やそのグループの裏話なども書き込んでいた。
さらにひどいことには、真帆から店の女の子の寮の名前を聞いていたので、俺はそこまで行って玄関に真帆のAVのパッケージのコピーを貼っておいたこともある。
警察から連絡があっても不思議ではなかったし、むしろ遅いくらいだったかもしれない。
店の関係者も恐らく泳がしていた、というか金を使う太客なのでしばらく目を瞑っていたのだろうが、さすがに堪忍袋の緒が切れた、という側面もあって警察に連絡したのだと思う。
それでも俺は本気で、全く悪いと思っていなかったのだからたちが悪いというか、とち狂っていた。
俺が警察に行ってどれくらい日が経った後だっただろうか。
携帯に非通知の電話が鳴った。
「もしもし、たかさんさん?」
真帆の声だとすぐにわかった。
(つづく)