俺の隣に座った刑事は、
「本当は署についてから聞くんだけど、今いろいろ教えてもらっていいですか」
と俺に聞いてきた。
家族構成、本籍、住所、これまでの仕事歴、貯金額などなど。
そんなこと一体何の関係があるんだ、というようなことも聞かれた。(後々そういうことを聞かれた意味がわかるのだが)
俺を乗せた車は、高速に乗った。
俺が援交をした場所は、俺の勤め先とは違う県だった。
そこまで連れていかれるようだ。
本当に天気のよい日だ。
まるで夢の中のようだ。
俺は逮捕された現実がどうにも現実に感じられず、文字通りぼーっとしていた。
悪い夢を見ているような気がして、漫画のように自分の頬をつねったりしてみた。
普通に痛かった。
それでも現実だとはどうにも思えず、俺、今起きてるよな、これって本当なんだよな、でもこの前よく似た夢見てたしな……なんて、そんなことをずっと考えていた。
俺は逮捕された。
ただ、冷たい手錠を目にしても、その温度を手に感じても、どうしても現実だと信じられなかった。
夢を見たときから、何となくこうなることは予想はしていた。
でも、信じられなかった。
天気は透き通る青空だったのに、目の前に深いもやが立ち込めたような気分のまま、いつしか車は警察署に着いたのだった。