警察を出て5分ほどの距離に検察があった。
土地勘はあまりなく、車窓から外の景色を黙って眺めていた。
検察では起訴内容について簡単な取り調べがあり、その後検察が勾留を裁判所に請求するかどうかを決める。
今でこそこういう知識はあるが、当時は全くなく言われるがままに動いていたので次に何が行われるのか不安だった。
検察も警察と同じように坂を降りて地下にもぐるように車が入った。
牢屋が三つ程並んでおり、中に硬い木のベンチが2脚、その後ろには紙のないトイレがあった。
俺は一番奥に入れられた。
この日、この時間に俺の警察からは俺一人だけが連れられてきたが、警視庁だと護送車が各警察署を回り、腰縄で電車ゴッコのように繋がれた対象者を回収して回るようだ。
それに比べると俺は幾分人間らしい扱いだった。
手錠がきつく、ひとつのことが気になると発作が起きやすくなる俺、同行の警官に少し緩めてくれないか頼んだが、その若い警官は無視した。
しかし、後ろにいたベテランの警官が笑いながら緩めてくれた。ありがたかった。
検察の中にいるほとんどが待ち時間だと言われたが、その通りだった。
椅子が硬いので、この送検の日が一番辛いとどの逮捕体験記を読んでも書いてある。
これは俺だけではなく護送の担当の人もそうで、椅子こそ俺より少しましでクッションもあるが、何もすることなく檻の外で俺を監視しながら俺が呼ばれるのを待つだけだった。
俺は自分の立場を忘れ、何ていい仕事なんだ、税金の無駄使いだと思って見ていた。
犯人の狂暴性や事件の大小でもう少し柔軟にシフトを組めばいいのに。
牢屋の中は俺一人だったので、俺は立ち上がりぐるぐると檻の中を歩き回っていた。檻の外には漫画などがあり、読みたければ取ってもらえたのだが、そんな気にもなれなかった。
どれだけ待ったろうか。
時計はあるのだが覚えていないし、記録もしていない。かなり待った。
ようやく呼ばれ、俺は担当の人に連れられ、エレベーターに乗り検察官の待つ部屋へ連れていかれた。