スーツを着て証明写真のブースに飛び込んで写真を撮った後、履歴書を携えてパチ屋へ向かった。
15キロほど痩せた俺はどのスーツもブカブカで、方のラインが全く合わず、鏡を見ても不恰好だった。でも、仕方ない。
そこは全国系列の大手の店だが、店自体は田舎の店舗でありあまり流行っている感じはなかった。
自分も嘗て客として行ったことはあったが、あまりの回らなさに1度しか行ったことがない店だった。
店に入り、カウンターに
「10時に面接のお約束をしたたかさんです」
と伝えると、女性店員が店長を呼びに行ってくれた。
待っているとマネージャーが来られ、外を回って併設している食堂に入るように促される。
席に座ると履歴書を出し、面接が始まる。
と言っても、何を聞かれたかはよく覚えていない。
なぜ前の仕事を辞めたの、とか全く違う業界に来たのはなぜ、とか普通なら聞いてきそうだし、それなりの回答は準備していた。
おそらくアルバイト面接だったので、そこまで深くは考えていなかったのだろう。
俺もアルバイトなので、逮捕の事実は伝えるのは止めておいた。
キツいけど大丈夫?とかその程度だったと思う。
しかし、若いマネージャーは思いの外かなり俺に丁寧な対応をしてくれた。パチ屋もサービス業、昔とは随分変わったのだろう。
でも未だに負けて店を出るとき店員にありがとうございました、なんて言われるのはちょっとムカつくのだが(-_-;)
むしろ聞きたいことはないか、ということで正社員になっていく上での見通しを聞いた。
詳細は避けるが、半年ほどアルバイトで様子を見て、年に何回かあるアルバイトから正社員登用のチャンスを待つことになるのが基本、全国に転勤が可能なタイプと地域限定タイプがあり、待遇に差があること、地域限定と言っても隣県への転勤はあり得ること等々の説明を受けた。
おそらく即正社員の道もあるのだろうが、その店舗での採用というのは枠があってすぐには無理だということや、俺の年齢的なこともあってのアルバイトスタートだったのだと思う。
早番、遅番の勤務体制などを聞いた後、簡単な適性検査を受けることになった。
スマホで幾つかの質問の答えを選択肢で選んでいくものだった。
性格検査のようなもので、アルバイト採用でも意外にしっかりとそういうところを見るんだな、と関心しながら受けていた。
30分ほどで終わり、お礼を伝えて店を出た。
どっと疲れが出た。
釈放されて久しぶりのスーツ、久しぶりの社会的な活動、妙に緊張した。
一つ一つが社会復帰へのリハビリだ。
一週間ほどで結果を電話で伝えるとのことだった。
俺はどん底から少し抜けられた気がして、疲れた中にも一筋の光を見た気がした。