逮捕されても前向きに生きるブログ~人生をやり直したい人たちへ~

児童買春で逮捕歴のある初老の冴えない爺さんが社会復帰に挑戦するブログ

ソープ嬢への恋 その7

当時ケミストリーが流行っていた。

俺のDOCOMOの携帯の着メロもケミストリーだった。

 

切なく甘いメロディーと恋の歌詞に憧れ、その世界に自分もびたびたに浸りたかった。

俺は金でその世界を甘受した。

 

本当のクリスマスの日ではなく、20日ごろだったと思う。

俺のデートが始まった。

 

店に行き、20万弱の金を払った。

事前に外出したい旨は伝えていたので、ドアの外の真帆は小さいカバンを持った私服で立っていた。

 

白いダウンジャケットに下はジーンズだったかな。

店の中の小綺麗なドレスもかわいいが、普段と違う真帆を見るのが新鮮だった。

 

真帆は俺のRAV4に乗り込んだ。

助手席に真帆がいる、

ここからは本当に二人きりの時間だ。

俺はかなり高揚していた。

 

まずはタワーに向かう。

メッセージの表示時間に遅れたら台無しだ。

余裕をもって時間を組んではいたが、何があるかわからない。

無事にタワーまで着いてくれよ。

渋滞や事故は勘弁してくれよ。

車の中で真帆と会話しながら、半分はそんなことを考えていた。

 

無事、予定通りタワーに着き、エレベータで展望台に上る。約束の時間まではタワーで下界の景色を眺める。

本当はイルミネーションがきれいなのだが、時間は早かった。レストランとホテルの時間から逆算すると、暗くなってからタワーに行くのは難しかった。

何せ相手はソープ嬢。閉店は0時。まさにシンデレラガールといったところだ。

 

時間が近づき、俺は真帆を電光掲示板の見える方に誘った。

 

「あれ、あんなところにメッセージが流れてるよ。」

 

真帆と一緒に他人のメッセージを読む。

 

そして、俺のメッセージが流れる。

 

「あっ」

 

真帆が呟く。

真帆は流れるメッセージを無言で目で追い、俺はそんな真帆の後ろ姿を眺めていた。黒いロングのさらさらした髪が今日もきれいだ。

 

メッセージが流れ終わってもしばらく真帆はその方向を眺めていた。

 

「びっくりした?」

俺が肩越しに声をかける。

 

「うん」

こちらを振り返る真帆は満面の笑みだった。

それが作り笑いかどうかはわからない。

でも、俺はほっとひと安心した。

まずは上々のスタートだ。

 

しばらくタワーで過ごし、エレベータに乗る。

 

真帆がカバンから紙袋を出した。

 

「これ、間に合うか自信なかったんだけど」

 

真帆は俺の首に手編みのマフラーをかけ、胸元で丸く結んだ。

 

「マネージャーの分も作ってたから結構徹夜したんだ」

 

真帆は店のマネージャーと付き合っていた。

背中に刺された傷があるとかいろいろ聞いていた。

俺はこのマネージャーの顔も名前も知らなかったが、激しく嫉妬したこともある。

 

「たかさんさんの方にうまく編めた方をあげる」

 

俺は完全にとろけた。

 

おそらく、人生で手編みのマフラーをもらえるのはこれが最初で最後のことだと思う。

マフラーは今は捨ててしまったが、グレーの毛糸で編まれたそのマフラーの柄や手触り、首に巻いた感触は今でもちゃんと覚えている。

 

俺は真帆をエレベータの中で抱き締めた。

俺はこいつと結婚したい。

本気でそう思った。

 

 

(つづく)