11:00過ぎだったろうか。
俺を乗せたワゴンは地下へ潜り、そこで下ろされた。
コンクリートに囲まれた中にある重い鉄の扉を開け、狭い階段を腰紐を付けられた俺が刑事に前後を固められ犬のように連れられる。
階段を上がるとそこは刑事の詰所のようなところになっていて、刑事が無事逮捕してきたというような報告を上司にしていた。
他の警官の視線が冷たく感じた。
まずトイレに行かせてもらった。
和式の狭く汚い便器がひとつあり、扉にガラス窓がついている。
片手錠と言って、手錠の片方を外してもらい腰紐をつけたまま俺はトイレに入った。
ジョボジョボと情けない音が狭い便所に響き、思わず水を流した。
後ろから刑事は見ていたのかどうかは知らないが、近くに人がいる状況での小便は何とも嫌なものだった。
取調室に入り、椅子に座らされた。
座ったパイプ椅子に腰紐をくくりつけられた。
そういう規則らしい。
情けない、本当に情けない。
俺は犯罪者だ。
様々な扱われ方にそんな思いがどんどん募っていった。
そして眼差しの優しい刑事が俺の前に座り、もう一人の刑事が隣の机に俺の方を向かずに座った。
いよいよ、取り調べが始まる。
これから何がどうなっていくのか、皆目見当がつかない。
言い様のない不安。
俺は唾を飲み込もうとしたが、口の中がカラカラだった。