N先生は「拘留請求が通らないように動いてみる」と言われ、面会室を後にした。
10時30分頃、俺はまたベストに腰ひも、手錠をつけられ裁判所へ向かった。
昨日と同じ若い人とベテランの人二人が俺の両脇を固め車に乗った。
待合室には漫画などはなく、固い木製のベンチの上に敷物もなく、味気ないものだった。
待ち合いには「ここは裁判所です。あなたには検察から拘留請求が出ていますのでその弁解を聞く~」云々の説明が書いた標示があり、弁護士がつけられるなどの表記もあった。
今でこそ俺はその文言の意味やその時は何がなされ、その後どうなるかは理解できるが、当時はその説明を読んでも全く分からなかった。
拘留請求とか、それが通ったら10日間は拘束されるとか、今なされていることは逮捕から72時間以内に決着がつくとかそんなことは知らなかったので、ただ連れ出されるままに動き、そこで何とか自分が早く留置所から出られるようにとレベルの低い策を練るだけだった。
暫くすると何とか質問室と言う部屋に入り丁寧に尋問を受けた。その場でN先生が裁判所へ来て、こういう状況なので拘留は何とか避けてほしいと言う訴えがあったことも教えてもらったが、裁判官の結論は「拘留請求を認めざるを得ない」ということだった。
俺は再び車に乗せられ、検察に書類を取りに行き、警察署に戻った。
この時点で10日間出られなくなったとは、全く分からなかった。