真帆の店が「イベント」をやり出した。
店は会員制を引いており、110分63000円ほどだったと思うが、非会員は75000円くらいした。
会員制と言っても一回非会員として遊べばメンバーズカードが発行され会員になる。つまり差額は入会金みたいなものだ。
それが非会員限定で20000引き、会員より安く遊べるイベントを月に一回くらいのペースで始めたのだ。
今でこそ新規獲得の大切さはわかるので、イベントの意味も思いやれるのだが、当時は何でリピートしている会員の方が高くなるんや、と思い何気なく真帆に愚痴った。
真帆は、「イベントの時は客層が悪くて」と嘆いていた。
普段は高いのが、50000台で若くてかわいい女と高級店のサービス、生で遊べるのは当時はなかなかお得だった。
そんなのを狙ってか、乱暴でケチ臭い男がイベントの日は押し寄せるのだという。
俺は真帆にNo.1をとらせるためにかなり無理をして通っていたのだが、このイベントの日をなるべく1日真帆を貸し切ることにした。
そうすればそんな客層の男から真帆をまもることが出来る。
俺はイベントになると店に通い、真帆と外出した。
1日貸し切ると大体40万ほどかかる。
俺の貯金はみるみる減っていった。
真帆はNo.1をとって俺と付き合うため、なるべく休みを減らして無理に出勤していると言っていた。
もともとあそこは弱い方で、不正出血があるとあそこに海綿を入れて店に出ることもあったという。(まあ、嘘だったのだろう)
俺はいつしか、店に行っても真帆からサービスを受けることがなくなった。
本当はやりたくてやりたくて仕方なかったのに、体を休ませるためにハグこそすれ、服を脱がすこともなかった。
下衆なことを言えば、エッチはしなくてもせめて口でしてくれないかなぁと思っていたが、それは言い出せなかった。
俺の貯金も底をついた頃、当時持っていたクレジットカードにローン機能がついていることを知った。
俺は当時はローン等組んだことはなく、車ですら現金一括で買っていた。
クレカのローンなどアホほど金利が高いのだが、そんな知識もなく俺はそれに手を出した。
確か枠は100万だったが、あっという間に限度額を迎えた。
「もう数万しか枠はないよな…」
そう思いながらATMでローンボタンを押すと、40万が普通に出てきた。
「ん?」
不思議に思うと、俺の限度額は知らぬ間に300万に増えていた。
そういうカードだったのかどうか全く知らないが、俺はラッキー!と思った。
まだ200万使える。
ATMからカタカタと音を立てて出てくる万札の束は、借金であり人の金なのだが、不思議と自分が金持ちになった錯覚に溺れた。
俺は打出の小槌を手に入れたような感覚で、真帆のもとへ通った。
間もなく俺のカードは頼んでもいないのにゴールドカードに変わった。
店で受付を済ませ、待合室で40万を払うとき、俺は完全に特権階級だった。
店のトイレは当時ではまだ珍しかった自動便座だったのだか、俺はトイレをしながら「この便器の金は俺がだしているようなもんだよな」なんてバカなことを考えていた。
ただ、その300万の枠もそれほど長くはもたなかった。
(つづく)