俺は店の掲示板のみならず、当時の2ちゃんねるにあった店のスレッドにも粘着した。
数年前までは過去ログとして見ることが出来たのだが、もう今は見られない(と思う)。
真帆から聞いていた店の裏話、真帆の個人情報などを書き込んだ。
それはもう見られたものではない醜い書き込みだった。
俺には一つ企みがあった。
企みというと何か策を考えているような感じだが、考えていたことはとてつもなく下劣で非人間的なことだった。
真帆は愛知県の田原というところの出身だと言っていた。
俺は真帆のAVのパッケージの写真を持って、田原へと向かった。
俺は真帆に聞いた断片的な情報から、真帆の実家を見つけてやろうと思った。
実家を見つけてどうするか。
お前の娘はソープ嬢だ。
おまけにAVまで出ている。
そして、俺はお前の娘に騙されて金を巻き上げられたんだ。
そう真帆の親に教えてやろうと考えたのだ。
守ってやりたかったはずの真帆の人生を俺はメチャクチャにしてやろうと思うようになっていた。
もちろんこういう風になったのは俺なりの理由はある。また改めて書くことにする。
が、それは言い訳に過ぎないことも分かっている。
俺は完全にストーカーだった。
俺は田原に向かう様子を逐一店の掲示板に投稿していた。
今高速に乗った。
今どこどこインターを過ぎた。
田原に向かっている。
もちろんその度に削除されていたが、構わず俺は書き込んでいた。
知多には行ったことがあったが、渥美半島は初めてだった。
確か冬の真っ只中だったように記憶しているが、渥美は暖かかった。
田原はメロン栽培が有名な場所で、真帆の家はメロンハウスが並んでいるところだという、それくらいの情報しかなかった。
当てもなく田原の町で車を走らせた。
何となくこの辺かな、というところでビデオ屋があり、俺はその店に入り店員にAVのパッケージを切り取った真帆の写真を見せた。一応、服を着ている写真だ。
「この女の子を知りませんか?吉川真帆と言うんですが」
「いえ、知りませんね」
当たり前だ。
こんなバカなことを俺は平気でやれるほど精神を病んでいた。
そして復讐心に燃えていた。
ハウスを探し、店で聞き込みをし、というのを何度か繰り返した。
全く情報は得られなかった。
そりゃそうだ。
そんな少ない情報で見つかるはずもないし、もともとが田原に実家があるわけでもなく吉川真帆という名前の女は実在しない。
真実は、このAVに出ている女の子が存在する、ということだけだった。
しかし、そんなバカな行動がきっかけで真帆に会えることになる。
(つづく)