普通にオムツを開けると、着ている服はもちろん、シーツから布団から全て便汚染してしまう。
水様便なので、服は上も下も便が染み、全身更衣は確定なのだが、シーツが汚れると寝たきりの人はシーツ交換がとてつもなくめんどくさい。
(ベッドからリクライニングの車椅子にうつっていただかないといけない。寝かせたまま交換する方法があるにはあるが、シワがよらないようにするのが大変。大抵入浴日にシーツ交換を被せている。)
だから、シーツが汚れるかどうかはその後の仕事の段取りに大きな影響を与える笑。
しかし、今回はもう服まで染み出ているので時既に遅しだ。おなかから太ももまで、茶色い水様便で汚れている。
お尻吹きやボロ布で拭くのだが、なかなかきれいにならない。
今の自分なら10分ほどで後始末出来るが、当時は下手くそだったので、一向にきれいにならないばあちゃんを前に悪戦苦闘していた。
俺の直属の上司(リーダーという)は、一切手伝わなかった。
その代わり、俺がしなければならなかった昼ご飯の準備を他のメンバーにやるよう指示を出し、俺に最後までやらせてくれた。
ありがたかった。
そこで、自分がやった方が速いとばかりに俺と代わったら、俺自身は排泄介助がうまくならなかったと思う。
小一時間かけてようやくきれいになり、それでコツを覚えた。
きれいなオムツを当てて、全身更衣をしてきれいにした後は、部屋中便臭に満ちていたが、俺自身の心も満たされていた。
俺一人できれいにできたんだ。
自信のようなものが生まれた。
それ以降、俺は排泄介助が好きになった。
もちろんオムツを開けたときに便が出ているとうっ、と思うのは変わらないが、きれいにしてやるとちょっと仕事した感を持てるのだ。
糞尿にまみれた他人のケツをきれいにする。
なかなかどうして、やりがいがある尊い仕事だと思う。