外は冷たい雨が降っていた。
この逮捕の期間で初めての本格的な雨だった。随分寒く感じた。
部屋でイライラしている俺を見て、一夜限りの同居人となったじいさんが、おかしいな、すぐ呼ばれると思うよ、と慰めてくれた。
昼飯の時間になった。
まさかまたここで昼飯を食べさせられるとは思っていなかった。
何を食べたのかすら覚えていない。
ふてくされて窓の外を見ていたとき、64番さん、と呼ばれた。
やっとだ。
俺は瞬間立ち上がり、じいさんがおお、よかったねと声をかけてくれる。
俺は挨拶もそこそこに檻の外に出た。
護送車から見る裁判所までの道。
これまで何度も見た。
遂にこれが最後なのか。
いや、釈放されたらもう一度この道を通ろう。今度は手錠されずに自由の身で、ここを歩いてみよう。そして2度と過ちを犯さないことを改めて誓おう、そう思っていた。
12:30、裁判所についた。
待ち合いの中で俺の嫌いだった警官が、「いいところに勤めていたのにもったいないことしたね」と声をかけてきた。
そう、もったいないことをした。
俺は最初教員になり、女絡みで辞めたが次の職場で10年以上かけて収入をもとに戻したものの精神的に病んで辞め、また安月給になったところで転職活動をこつこつ進め、また何とか500万を越える年収を手にしたところだった。
しかし、そのときはそんなことなどどうでもよく、早く自由になりたい、早く会社の寮に行って荷物を引き上げたい、そんなことを考えていた。
そして俺は、裁判官の待つ部屋に呼ばれた。