あれよあれよととんとん拍子にことは進み、その障害者施設へ面接に行くことになった。
紹介サイトは履歴書の書き方や面接のアドバイスまでしてくれる。というか、俺にとってはそんなものは不要なのだが、こうやって業者を仲介させるともっとよいメリットはある。それは後で述べる。
再びスーツに身を固め、俺はナビを使い車を施設に走らせた。
俺の実家は山の方なのだが、その施設は10分も車で走ればそこは海。通うにはまあまあの距離だった。しかし、あんまりそんなことはそのときは気にならず、むしろ採用されるかどうかが気になっていた。
部屋で待っているといかにも気のいい年配の男性と女性二人が来てくれた。
履歴書を前に、「こういう経歴の方は珍しくて……もったいないですね。ゆくゆくは事務の方もやってもらいたいくらいで…』と男性スタッフは評価してくれ、女性二人は詳細の話は控えるが『是非来て欲しい』と言ってくれた。
逮捕されて社会的に抹殺された気持ちになっていたので、それらの言葉は大いに俺を勇気づけた。久々に他人に認められる高揚感を味わい、プライドをくすぐられた。
その後施設内の案内を受けた。
浴室、食堂、作業室、居室……
居室には移動式のリフトが備え付けられ、腰を痛めないように環境を整えているそうだ。
障害児用の部屋もあった。
「きっとたかさんさんの経験を生かせるような仕事もしていただけると思います」
そんなことを言ってもらえ、俺はすっかりその気になっていた。
その場で採用とか不採用とかいうのは出なかった。業者を挟んでいるから多分出来ないのだろう。
しかし、俺の気持ちはほぼ固まっていた。
ここでもう一度俺の人生をやり直すんだ。
透き通るような青空が広がる、気持ちのいい日だった。
俺は、生まれ変われるような気がしていた。