致死量の薬は飲みきった。
どうやって死んでいくのだろう。
不意に涙が出て景色が歪む。
暫くすると気持ち悪くなってきた。
それは死に近づくような気持ち悪さではなく、酒に悪酔いした時のような嘔気が徐々に口元に上がってくるような感じだ。
ウエっ、気持ち悪い……
そう思ったのも束の間、猛烈な吐き気が俺を襲った。
思わず俺は車のドアを開け、外の道にオエッと吐き出した。
さっき飲んだバファリンが多量に出てきた。
酒は吐くと少し楽になり、スッキリすることも多いが、バファリンは違った。
吐いた後も猛烈な気持ち悪さが延々と続いた。
あまりの気持ち悪さに水を口に含んでもすぐに吐き出してしまう。
俺は無意識に車を運転し、自宅へ向かっていた。
今思えばよく運転できたと思う。
家に着くと万年床になっている布団にバタンと倒れ込んだ。
気づくと頭がガンガンし、キーンと高く激しい耳鳴りがしていた。
それと同時に不定期に襲う嘔気、そして下痢。上から下から出続けた。
意識はあるが、気持ち悪さが止まらない。
興味がある人はググってもらうといいが、バファリンの主成分であるアスピリン中毒の典型症状が出ていた。
一緒に吐き気止めを飲まないと吐いちゃって自殺できないよ、なんて情報が載っているサイトもあるが、多分吐き気止めなんかではどうにもならないような嘔気の強さだ。
だから、市販薬のODなんかでは自殺など出来ない。
俺は風俗に行ってたまにこの話をすると、何ともなくてよかったねーなんて言われるが、「何で無事だったと思う?」とクイズを出し、「バファリンの半分は優しさで出来ているから」とオチをつけるまでが一つの流れになっている。
話がそれた。
いつしか夜が明けたが、気持ち悪さは変わらない。
この日俺は部活のため鍵を開けないといけなかった。
自殺をしたのにそれが気になった。
鍵開けないと子供ら部活出来ないな。
俺はフラフラになりながらまた車を運転し学校に車を走らせ、何とか鍵を開けた。
そしてまた車に乗り家に戻って倒れ込んだ。
当たり前だが、本当は子どもだけで部活なんかさせてはいけないのだが、俺のからだと心はそんなまともな思考が不可能なくらい傷ついていた。
(つづく)